うたたね

──とん


肩に軽い衝撃を受け、ああかねは目を覚ました。
「……ん〜?」
 まだ、まどろんでいたいと思いながら、あかねは目をうっすらと開ける。
 視界に入るオレンジの髪。
「…?…えっ! 天真君!?」
 あかねの肩にもたれかかっていたのは天真だった。
 あかねは天真も寝ていたことに気づき、慌てて口を押さえる。
(……良かった。起こさなかったみたい)
 今日は天真と二人で怨霊退治に来ていた。
 昼になったので、昼食がてら、木の下で一休みしていたのだが……。
 どうやらそのまま眠ってしまったらしい。
 春の陽気はあまりにも気持ちが良くて……。
 それは天真も同じだったようだ。彼もまた、あかねにもたれて寝ている。
(結構つきあいは長いけど……天真君の寝顔、初めて見るかも……)
 天真の寝顔をじっと見つめる。
(ふふっ、カワイイvv)
 腕を組んだままの姿勢で、天真はあかねにもたれかかっている。
(あ、眉間にしわが寄ってる……)
 顔をのぞき込んだあかねは、天真が顔をしかめているのに気づいた。
(嫌な夢でも見てるのかな…?)
 あかねは天真の腕をそっと解いて、片方の手を握った。
(普段はあんまり顔に出さないけど、疲れてるんだろうな。
 妹さんのこととか、大変なんだよね? なのに今日も怨霊退治につきあってくれて。
 ……いつもありがとう、天真君。私も手伝うよ、頑張ってね)
 それが通じたからかどうかはわからないが、天真の寝顔がやわらいだ。
 何とも優しげな表情になる。
(あ、笑った。…この笑顔好きだなぁ……)
 あかねは天真のことが好きだ。本人には伝えてないが、そのうち伝えたいと思う。この戦いが終わったら……。
 一緒に京の世界に来てしまったのは偶然だが、今は彼と一緒に来たことを嬉しく思う。
 あかねは嬉しくなって、天真に頭を寄せた。
(ずっと一緒にいたいなぁ)
 たとえ自分の思いが、受け入れられなくても。
「……んっ……ん?」
「あ、天真君。ゴメンね、起こしちゃった?」
「ん、いや、そんなことはねぇけど。……オレ寝てたのか。わりぃ、重かったろ」
「ううん。そんなことないよ」
 天真は体を起こしてのびをした。
「う〜ん。あ〜寝た!! やっぱ春って気持ちいいな」
「そうだね」
 二人の間に、ゆっくりと時が流れ出す。
「……なぁ」
「? なに?」
「オレな、今、嫌な夢を見てた。ランが振り向いてくれなくて……つらくて……恐かった」
「……そうなんだ」
「でも、あかねが出てきてさ。『私も手伝うよ、頑張ってね』って言ったんだ。……ありがとな」
「えっ!?」
 あかねは自分の顔の温度が上がるのを感じた。
 慌てて顔を逸らす。
「わ、私は何もしてないよ?」
 天真はあかねの頭を小突いて言った。
「うるせーな。言いたい気分なんだ。素直に言われとけ」
 そして天真は立ち上がった。
「さて、怨霊退治の続き、行こうぜ!!」
と、さわやかな笑顔をあかねに向けた。
 あかねも笑って立ち上がった。
「うん。行こう!!」

 桜の花びらが風にのって舞う春。遙かなる世界での思い出。

 

〜あとがき〜
 コレ書いたときって、めちゃめちゃ和んでたような……。
 春の日差しは、ホントうっとりなんですよね。
 ちなみに天真君も大好きです。直球ストレートど真ん中! なのに空振りしてるところがまたいいっす。
 萌ですね☆
 しかし、なんと短い話なんだ……(滝涙)

 

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