「薄月夜2」ネタバレ?小話
+ WARNING! +
この話はドラマCD「薄月夜2」のネタバレかもしれない小話となっております。
まだCDをお聞きでない方はご注意ください。
また直接は出てきませんが、
九郎さんがちょっとかわいそうな事になってます。
↓ それでも読んでくださる方はスクロール ↓
ふらりとこちらへ歩いてくる望美に、譲は腰をあげて歩み寄った。 「先輩。……どうです、九郎さんの様子は……?」 「うん、やっぱりちまちま落ち込んでる」 「ち、ちまちま……。そ、そうですか」 望美の言葉が少し気になるが、どうやら変わらないままらしい九郎の状態に、譲は肩を落とした。 九郎は昨日からずっと塞ぎこんでいる。自分を恨む怨霊に襲われたせいだ。 自分にできることといったら、食欲が出るようなおいしいご飯を作ってやることくらいだ。譲がそれを望美に言おうと口を開いた瞬間、望美も言葉を発した。 「ねぇ、譲くん」 「明日のご飯は……はい?」 「エンピツ持ってない?」 「えっ、エンピツ……ですか? すみません、持ってないです」 一体全体なぜエンピツなのかわからないが、とりあえず素直に譲は答える。 「あの、筆とかだったら、誰かが持ってるんじゃないですか?」 たとえば弁慶とか朔とか辺りなら持っていそうだ。 しかし望美は首を振って、 「筆は竹だからダメ。固すぎるから。……そうすると、その辺から手ごろな木の枝を持ってくるしかないかなぁ。でもやっぱりエンピツの芯がなぁ〜」 「あ、あの、なにに使うんですか?」 望美の意図がわからず、またその表情が大変気難しげだったので、いささか遠慮気味に譲は問い掛ける。 振り向いた望美は、伏せがちな目でおごそかに言った。 「今度九郎さんがうつむいたら、デコペンしようと思って」 「でっ!? でこぺんですかっ!?」 あまりな言葉にすっとんきょうに叫んでしまう。 望美はそんな譲を、咎めもしなければ静かにしろと口を押さえることもなく、淡々と続けた。 「そう。九郎さんとっても落ち込んでるのね。気持ちはわからなくもないけど、それにしたって落ち込みすぎってくらい落ち込んでるのね。眉間にシワよりっぱなしの顔うつむきっぱなしなのね。はっきり言って鬱陶しいわけね……そうよ!」 望美は吠えるように顔をあげる。どうやら望美は怒りを押さえていたらしい。 思い出せば俯き顔もおごそかな声も、煮えたぎる湯鍋を押さえる蓋のようだった。だけれどそれも限界を超したようで、沸騰したヤカンのように言葉を並べはじめた。 「だいたい何!? 男のくせにうじうじうじうじ落ち込んじゃって!? アレ本当に源氏の大将!? 本当に源義経!? 大将なら大将らしく何が起こってもどっしり構えてろってのよ。そりゃ誰かに恨まれて嬉しい人なんかいませんよねそうですよねー。だけど今心当たりをあれこれ考えてみたところでわかんないんだから、せめてお腹いっぱい食べてげっぷして寝るくらいの度胸を持ってなさいよね!!」 雪崩のごとくグチる望美に、譲は思わず拍手してしまった。この場合拍手正しいかどうかという以前に、望美の漢らしさにうっかり感動してしまったためだ。 「しかも何!? 弱ってるから私にできることをしたいって思っただけなのに、『バカ言うな』ですってぇ!? バカはあんたでしょ否むしろ阿呆!? オレの為にお前が死んだらとか言う前に、死にそうな顔してる自分をなんとかしろってのよ! 熱があるからって優しくしてりゃまたぐちぐちして! あ〜、やっぱり実力で克を入れるんだった! つか今からでも遅くは……」 そう言って九郎が寝ている方へと体を向ける望美を、譲は慌てて引き止めた。 「わー! 先輩ちょっとまって今はまずいです!」 「放して! 怨霊が現われる前に元気出してもらわなきゃなんだから!」 「元気が出る前に魂が飛びますっ! この件のカタがつく前に九郎さんがいなくなっちゃったらマズイです! デコペン用の木を探すなら明日一緒に探してあげますからっ!!」 「そんな生温い!」 「な、生温いって先輩!? わっ、ちょっ……九郎さん! 逃げてください九郎さ〜ん!!」 その後九郎がどんなヤキ……もとい克を入れられたか、譲を始め仲間達は語らない。 ただ事あるごとに、額に横一文字なみみずばれをこさえて闊歩する九郎の姿が、たびたび目撃されているらしい。 この二人が、すべてが終わった後に幸せに暮らすとは、誰も想像しなかったに違いない。 でも今は、そんな未来をまだしらぬ、爽やかな旅の最中……。 |
〜あとがき〜 (笑) ドラマ聴いてて、後ろ向きな九郎にちょっと突っ込みいれたくなったもので。 怒った望美さんがマシンガントークなのは、ちょうど読んでた某マ王様の影響じゃないですよ?(爆) |
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